『狂熱のふたり~豪華本「マルメロ草紙」はこうして生まれた~』

イントロダクション
“本というものの可能性”を追求した8年間の記録。
桁違いの知性と独自の語り口で、エッセイ、文芸評論、小説、戯曲、古典の現代語訳、日本美術論など、膨大な作品を遺した作家 橋本治。 その橋本がデビュー当時から共創を切望し、ダイナミックな構図と煌びやかな色彩表現で“現代の浮世絵師”とも称される異能の画家 岡田嘉夫。
ふたりのクリエーターが既成概念を打ち壊して挑んだ前代未聞の豪華本『マルメロ草紙』、その制作過程をつぶさに記録した秘蔵映像がついに公開される。
“いい大人が本気で遊ぶ、型破りな創作現場を目撃。
“「美しければ、文字なんか読めなくてもいい」
『マルメロ草紙』の制作が始まった日、橋本は毅然と言い放った。文章を読ませることが本業にも関わらず・・・。
橋本と岡田が目指したのは、アールデコの優美さに貫かれた途轍もなく美しい本。
ふたりは互いを挑発しながらアイデアを出し合い、それが叩かれ揉まれ、変化し、定着する。そこに装丁家・編集者・製版オペレーター・印刷技術者・製本職人たちが加わって、それぞれのクリエイティヴ魂全開で表現を深めてゆく。驚くべき繊細さで目標に向かっていくヴィジュアルの鬼たち。その現場は、いい歳をした大人たちが本気で遊んでいるカッコ良さに溢れていた     

監督の浦谷年良はこれまでに伊丹十三、宮崎駿、深作欣二らのドキュメンタリーを制作してきた。浦谷にとって永年の宿題であった本作の公開がついに果たされる時がきたが、橋本と岡田、そしてこの記録を浦谷にすすめた刈部謙一も、もはやこの世にいない。本作は亡き三人の男たちへ、敬愛とともに捧げられる。
*『マルメロ草紙』とは
二十世紀初頭のパリを舞台にした橋本の耽美小説。岡田流アール・デコの挿絵が濃艶に彩る。2013年に集英社から定価35,000円/限定150部で刊行された。
コメント
竹下景子
俳優
作家の言葉が、色彩が次々に変容して追熟する果実を見ているよう。
マチュアというの?これも一つの化学変化なのかなあ。
演劇もこんな風に深めていけたらいいなあ、と思いました。
柄本明
俳優
笑いました。
不良の集まりは一見和気あいあいなんだけど こわいなあ
河野通和
編集者・読書案内人
出版界良き時代の「最後のあだ花」にしちゃいけない!
橋本治×岡田嘉夫に刺激され、
「シン・狂熱のふたり」がX年周期で出てきてほしい!
柳澤健
ノンフィクションライター
岩田専太郎と歌舞伎を深く愛する橋本治と岡田嘉夫はツーカーの仲。
小説家が「採算度外視の豪華本をやらない?」と誘うと、
イラストレーターは「やるやる!」と大爆発。
絵は精緻で優美でゴージャスでいやらしく、
文字はカラフルに舞い散る。デザイナーもノリノリで、
製版担当者もやる気満々。
編集者だけがひとり青い顔。
これはもう大人の文化祭でしょ!
恩田泰子
読売新聞編集委員
「狂熱のふたり」を見て、ぶっ飛びました。
ものすごい作家とものすごい画家がいて、
ふたりが思い描いたことを実現できる人たちがいて、
それを撮っていた人がいるって…。
あらゆる意味で貴重な作品でした。
「美術の窓」編集部
インタビューは最小限、
物語仕立ても分かりやすい演出もなく、
映し出されるのは議論の様子と出来上がっていく作品ばかり。
それだけで、ここまで見応えある
ドキュメンタリーができるのかと驚きました。